桔槹5月号から

写真は「写真AC」のフリー素材を加工使用

やどかりの顔となり早十五年 大河原 真青

震災の句はいろいろと詠まれています。同作者の昨年八月号の句で「漂白の田螺となりしあの日より」があります。その句があるので、今回の句を頂くのには少しためらいがありました。どちらも「田螺」「やどかり」と動物であることもひとつです。ただ、この一句だけを読み鑑賞すると、どうしてもこの句を外す事は出来ないと思い巻頭に頂きました。震災から十五年目、復興も進んでいると思いますが、原子炉のデブリの取り出しのこと、処理水のことを考えると未来はなかなか見えて来ません。さて、やどかりの顔はと考えてみても、ただ大きな殻に隠れていて、なんとなく蟹のような様と言うしかありません。震災に遭って、元の自分に戻せないでいる。そんな思いを「やどかりの顔」の措辞で表したのでしょう。あれから、もう十五年も経ってしまった。でも、未だ復興は遠いという歎きの声が聞こえます。

(選評:江藤 文子)

 


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