桔槹3月号から

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冬の月われら地球に居てよいか  相馬 優美

作者はなぜ人間が地球に居てよいのかと書いたのか。背景に戦争や地球温暖化があるのは確かだろう。だがこの句は、そもそも地球は誰のためにあるのかという問いを突き付けてくる。その発想・想像力に驚かされる。

人間は地球上の一生物として存在するが、人間中心主義により人間の利益や快適さばかりを求め、自然資源の過剰な利用や環境破壊を行っている。持続可能な地球なくしては人類も存在できないのは明白だが、そのためには自然との調和や共存を重視し、環境保護に向けた取り組みをしていかなければならないはずだ。

冴えわたる冬の月を見上げれば、宇宙を感じ、静寂は森羅万象を思い起こさせる。つぶやくようなこの句は、私たちに地球の美しさと脆さを教え、その尊さを再認識させてくれる。(選評:永瀬 十悟)