桔槹4月号から

写真は「写真AC」のフリー素材を加工使用

しんしんと満つる月の香セロリ食む 相馬 優美

山を仰ぐように、空もまた仰ぐ。夜空もまた斯くの如しである。今も昔も変わらぬ月に心を寄せている。季題の頂点を占める「雪・月・花」、その中でも月は手強い。模糊たる月の夜を手元に引き寄せ、独自の感性を示した。感覚も気息も充実している。下り来る夜気とセロリの質感の取り合わせは何とも言えない。静かで生気という筋が通っている。

掲句には声高な評はいらないだろう。内容に深入りせず、二度三度このまま読み返し味わいたい句である。そこで感じとった印象がこの句のすべて。俳句を続けて来てよかったと思う時である。時として鑑賞が作品をしばってしまうことがある。俳句は理屈ではないということが良く分かる句である。(選評:金子 秀子)


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