桔槹11月号から

写真は「ぱたくそ」のフリー素材を使用

かなしみのゆきわたりたる夏の果

雨音や真夜の金魚とあそびをり  西山 逢美

 最近の私の俳句の鑑賞は以前と比較して少し変わって来ていると思う。それは勿論年齢的なものもあると思うが、多くの作品を見てきた自分なりの変化だとも思う。選は自由で生き方も考え方もみんな違えば、おのずとそれぞれの選は違って来るのは当然のこと。私の現在の選は作者とその句と一対一に向き会って、言葉の新しさばかりでなく、平明ですっと心に入って来るもの、語りかけてくるものを頂いているように思う。今月の逢美さんの作品ですが、投句された句の全体に人間の哀愁の色が見える。それは今はひとりだからと言う様なものではなく、誰でも心の底に秘めているものの様に思う。一番目の一句がそれを言い当てていると思う。かなしみがゆき渡って夏の終わりを迎えた。夏は弾ける様な明るさばかりではない。真夜に金魚と遊ぶと言うかなしみもまた。(選評:江藤 文子)