同人・仲間の句集紹介(2021年以降)

齋藤稔の第三句集 天つ風

桔槹同人 齋藤稔氏の第三句集『天つ風』がこのほど上梓された(私家版限定300部発行・非売品)。句歴はまだ7年と短いが、急速に力をつけていることが窺える。第二句集『原始林』から一年半後の刊行。本のサイズは105×175㎜の新書版で88ページ。2020年以降の百二句を収載している。

 

自句十選

 

魚氷に上る水戸天狗党の乱

寒明けて萬斎のこゑよくとほる

空豆の一寸飛んでそれつきり

光芒の八溝山麓猪はしる

ごつごつと手足短かき解夏の僧

咲いてなほ十日の菊となりにけり

紅葉かつ散る会津東街道

山眠るサマータイムを聴きながら

両の手はいつもからっぽ初御空

 

初乗やとある二人のとある駅

 

齋藤稔の第二句集 原始林

桔槹誌友である齋藤稔氏の第二句集「原始林」が上梓された(私家版限定200部発行・非売品)。

句歴はまだ6年と短いが、急速に力をつけていることが窺える句集だ。新書より少し大きいハードカバーで125ページ。2019年に第一句集「鬼瓦」を上梓しており,本句集はそれ以降の百句を収載している。

なお,齋藤氏は2020年より桔槹の誌友として活躍中である。

 

目 次

Ⅰ 春  31句

Ⅱ 夏  21句

Ⅲ 秋  29句

Ⅳ    冬  19句

 あとがき

 

 

 

 

江藤文子同人会長の第一句集 しづかなる森

江藤文子同人会長の第一句集「しづかなる森」が令和4年3月に刊行された(コールサック社。定価2,000円 税別)。

帯文は、森川光郎代表と永瀬十悟同人。

 

うち、森川光郎代表の帯文は次のとおり。

『一句を静かに述べて、一句のどこかに波乱を生む。作者の作句の骨法だ。「セーターの袖よりたたみ」と静かに述べながら、団円をどこに据えようかと窺う。その団円の選定、「海しづか」に独自の視点がある。文子俳句の魅力はここにある。』

 

 目 次

序句  森川光郎

Ⅰ 夏 鷗

Ⅱ 牡丹畑

Ⅲ 海の色

Ⅳ 万緑のことば

Ⅴ 荒星降る

 跋  永瀬十悟

 あとがき

 

 

江藤文子 句集『しづかなる森』|コールサック社|詩集、詩論集の自費出版・企画出版 (coal-sack.com)

 

 

 

 

  

 

 

森川光郎代表の第五句集 町空

 

 95歳を迎えた森川光郎桔槹代表の第五句集『町空』が1月末に発刊された。常に新しいものを求める姿勢は95歳の今も変わらない。そのあとがきにはこうある。「・・・・一句をかくごとにこだわる。己の書いたものに対する反省と点検は、大事であるけれど、これらは決まって忘却の中に埋没していく」と。つまり、忘却の中に埋没することを拒み、許さない、許したくないのだ。そういう姿勢が我々を惹きつけてやまない。桔槹5月号では「私が選んだ一句」という特集ページを8ページに渡って組み、森川光郎の広く深い世界に近づこうと試みている。

 

 

  

 

 

 

大河原真青の第一句集  無音の火

 

桔槹同人 大河原真青の第一句集無音の火がこのほど満を持して発刊された(現代俳句協会刊・税別2,000円)。

  

 帯文は桔槹の森川光郎代表、序文(序にかえて)は小熊座主宰の高野ムツオ現代俳句協会副会長だ。

 

珠玉の342句は以下の6章に分けて収録される。

 波の音 二〇一四年以前

 鰓の痕 二〇一

 日の雫 二〇一

 月の暈 二〇一

 架空の町 二〇一

  花の奈落 二〇一

   高野ムツオ氏「序にかえて」より抜粋

 

…その悲しみと慣りが十七音に結晶化している。た

とえば、避難を余儀なくされた町のさまを詠った次の

ような句。

   国道を鉄扉が鎖す花の雨

   真葛原けむりのやうに町は消え

   わが町は人住めぬ町椋鳥うねる

…中略… 「町」とは商店や住宅と呼ばれる建物の呼

名ではないという、自明のことを現場に立つことで改

めて実感できた。人間が住んでこそ初めて町なのだ。

人間がいなければ、いかに現代的、先進的な建造物で

あっても古代の廃墟と何ら異なることはない。これら

                           の句はそうした町でなくなった町への鎮魂の祈りとそ

                       れを強いた人間への怒りに満ち満ちている。

                    水草生ふ被曝史のまだ一頁

                          この句の重さを今反芻しながら噛みしめている。