桔槹1月号から

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ゐのこづちかくしの中の肥後守  佐藤 健則

掲句には無言の厚みがあり、足を長く止められた。投句用紙の余白に感じたことを箇条書きにし、そこから句のなかへと入ることにした。誰にも見向きされない「ゐのこづち」に肯定の気息を通わせ、確かな存在感を示した。日頃なんとなく視界に入っているものが、急にありありと存在感を高めるときがある。秋が動いて行く中に、あるべきものを、あるがままに捉える作者の博愛の眼差しがある。上五から中七の畳み込み方にある張り感がそれを示している。

 

「墨糸の上を二月の駆け抜けり 佐藤健則」

 

大分前になるが、光郎先生選の巻頭句であり、作者の名前が私の中にインプットされた時である。そして今回の句を拝見して、いつまでも同じ所に足踏みをしていないということだろう。(選評:金子 秀子)