桔槹3月号から

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燗酒や皆軍拡を唱へをり  佐藤 健則

俳人の「俳」は、人に非ずと書く。さまざまな「人に非ず」があるが、例えば多数派にくみしない、常識を疑ってみる、そうした姿勢から生まれた俳句は、既成概念にとらわれている私たちの心を揺さぶる問いかけとなる。その答えはそれぞれの読者が考えること。 

様々な意見や立場があるのを承知の上で、作者は今軍拡を唱えることが良いことなのか。しかも皆が一斉に言い出すのは何か違うのではないかと問う。歴史を学べばかつての日本に起きたことと同じではないのか。盃をちびりちびりと傾けるような「燗酒」は、熱くなり過ぎず酔い過ぎず。作者の反骨精神が覗く。 (選評 永瀬十悟)