桔槹7月号から

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百年は一瞬の旅花吹雪  ほづみゆきこ

 あざやかでどこか一抹の淋しさがある。桜はそうしたものとわかってはいても桜を待ち花吹雪の下にたつ。目に見えない何かを肌で感じようとする。流れゆく大根の葉ではないが、捉え難い一瞬一瞬の時の流れを、季語の「花吹雪」に仮託している。表現の上に、一つ光る言葉があればいいと思っている。それが、「一瞬の旅」である。中七の見得を切っているような微妙な切れの転換がいい。人生百年時代を、見得を切りながら、花吹雪を浴びながら、あと少しあと少しと、希望を抱かせてくれる感情の高まりを花吹雪にのせた。(選評:金子 秀子)