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冬ざくらぽつぽつ空にとけゆけり 郡司 真理子
六句ご投句頂いた。一句目から二句目、三句へと徐々に己を消して行く、句が澄んでいく。主張している所がないということだろう。ただそこに佇んでいる冬ざくらをそのまま詠んでいる。こういう作品を鑑賞するときは、第一に季節の背景を念頭に置きたい。冬ざくらは、寒桜とは別もので、十一月のまだ寒くなく、晩秋から冬への移行がふっと止まった時に咲く。咲くというより開くと言った方がいいかも知れない。
「冬ざくら」「ぽつぽつ」「空」「とける」何も語ることのない言葉と言葉が引き合い、響き合う。そこに、十七音の韻律がうまれる。桜なら「散る」。椿なら「落ちる」。冬ざくらといえば「とける」なのである。このことに気づいた作者の詩の姿がここにある。
同じ作者の句/返り花雨粒ひとつとどめけり/むしろ、こちらの句の方が良かったかも知れない。しかし、己を消すということを考える時、下五に己が出てしまった。雨粒「ひとつ」のあとに、なぜ「ふたつ」という言葉につながらなかったのだろうと、僭越ではあるが、しばらく考えた。「返り花雨粒ひとつふたつかな」「かな」という切れ字を使い、返り花に思いを託す。
(選評:金子 秀子)
