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漂泊の田螺となりしあの日より
春驟雨被曝の町を洗はむと 大河原 真青
東日本大震災より十四年になります。その年に永瀬十悟さんは自然災害、原発崩壊による被害を詠んだ五十句「ふくしま」で角川賞を受賞され、福島の現状をいち早く、俳句によって伝えました。十四年立ち復興も進んでいますが、原発の廃炉問題などまだまだ道は遠い様に思います。現在の小学生、中学生は震災を知らない年代になって来ています。十四年立ち改めて私達は俳句を通し、震災を忘れず残し伝え行かなければと思うこの頃です。さて、真青さんの二句、震災を踏まえての句と思います。一句目、「あの日より」とは震災の日よりと思って良いでしょう。今はあまり見ることの出来ない田螺ですが、昭和生まれの私達には、田植え前の田に取りに行ったり、また食べた経験もあり、身近なものでした。その田螺と人間を重ね合わせて見ているのでしょう。いつまでもあの日を忘れる事はない「漂泊」との気持なのです。二句目、被曝の町を洗い流してやろうとの思いで驟雨となって来てくれたと。作者の目線、主張が十七音の中に読み取る事が出来ます。(選評:江藤 文子)
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